千葉家庭裁判所 平成6年(少ロ)1号 決定 1994年7月18日
少年 N・S(昭51.11.21生)
主文
本人に対し、金12万円を交付する。
理由
1 当裁判所は、平成6年6月23日、本人に対する平成6年少第445号窃盗保護事件において、送致事実が認められないことを理由として、本人を保護処分に付さない旨の決定をした。
同保護事件の記録によれば、本人は、上記送致事実と同一の被疑事実に基づき、逮捕勾留されたことが認められる。
2 そこで、本人に対する補償の要否について検討すると、上記保護事件の記録によれば、本人は、上記送致事実と同一の被疑事実で、平成6年2月14日に逮捕され引き続き同月16日に勾留され、同月25日、上記保護事件が当裁判所木更津支部に送致されたが、同支部裁判官は観護措置を執らず、同日釈放されたものであり、その身柄拘束の日数は、合計12日間であることが認められる。
そして、本人には、上記保護事件のほかに、平成6年少第541号、同第660号、同第697号及び同第892号の各保護事件が当裁判所に係属しているが、本件の平成6年少第445号保護事件の事実で逮捕、勾留された当時、その逮捕、勾留を利用してその他の上記各保護事件の事実の取調べがなされたという関係は認められず、また、本人には、家庭裁判所の調査官若しくは審判などを誤らせる目的での虚偽自白の存在など、少年の保護事件に係る補償に関する法律(以下「法」という。)3条各号に規定する事由は認められない。
したがって、本人に対しては、法2条1項により、上記身柄拘束日数12日につき、補償をすべきである。
3 次に、補償金額について検討するに、本件保護事件記録及び本人に係る少年調査記録によれば、本人は、逮捕当時父親の経営する造園土木業を手伝い給料を得ていたところ、平成5年10月分として17万4000円を、同年11月分として20万2000円を、同年12月分として28万円を、そして平成6年1月分として13万2000円をそれぞれ得ていたこと、本人は上記逮捕当初から一貫して犯行を否認していたこと、本人は、逮捕当時、内妻と同棲していたところ、上記身柄拘束中に長女が出生したが、身柄が拘束されていたためにその場に居合わせることができなかったこと、捜査段階から弁護人(当裁判所係属後は改めて付添人となる。)を依頼して防御活動をしていたことが認められ、これにその他上記各記録によって認められる本人の年齢、生活状況等諸般の事情を総合して考慮すると、本人に対しては、1日1万円の割合による補償をするのが相当である。
4 よって、本人に対し、補償の対象となる全期間につき、上記割合による補償金合計12万円を交付することとし、法5条1項により、主文のとおり決定する。
(裁判官 鈴木秀夫)